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2008.07.04

【北京】中国人が日本大使館員を襲撃(注意喚起発動)

本日、北京の日本大使館よりメールが届きました。全文を転載致します。

日本大使館館員への傷害事件(注意喚起)
(08.07.03)

1.7月3日午後0時45分頃(昼間)、日本大使館前の日壇路(国際倶楽部飯店正面付近)を歩行していた日本大使館館員(男性、27歳)が背後から刃物を持った中国人と見られる男に襲われる事件が発生しました。男はその場で武装警察にとりおさえられましたが、同館員は、当該男がとりおさえられる過程で、右手首に軽症を負いました。

2.本件の発生後、日本大使館より中国側に対し、在留邦人の安全確保に万全を期すよう改めて要請を行いました。中国側よりは、遺憾の意とお見舞いの言葉等を述べた上で、現在、当局において動機等につき取調べを行っているところであるが、とりあえずの調査結果として、本件はあくまでも個別の事件であり、日本人一般に対する脅威が高まっていることを示すものではないとの趣旨の見解が伝えられています。

3.このような事件が発生したことを踏まえ、念のため、在留邦人の皆様におかれましては、引き続き、安全に十分ご注意ください。万一類似の事件に遭遇した際には、日本大使館にもご一報されるようお願いします。

先日の秀水街事件(「在中国日本国大使館より異例の通達」)でも申し上げたとおり、北京大使館の情報網に「何か」がかかり、それを警告しているのではないか?という推測をしておりましたが、ついに傷害事件にまで発展してしまったようです。本日はこのニュースについて解説してみようと思います。

まず、気をつけなくてはいけないのは、このメールは「注意喚起」であるということです。メールのタイトルでも「注意喚起」と書かれています。この「注意喚起」とは外務省の用語です。外務省は「危険情報」として5段階に分けて海外の危険を知らせますが、「注意喚起」はその一番下の「レベル1」になっています。2002年4月からこの5段階表記は改められて4段階のカテゴリーによる表記に改定されましたが、今でも併用されているが実情です。

【参考】海外安全ホームページを使いこなそう! 「危険情報」とは?
http://www.anzen.mofa.go.jp/masters/risk.html

例えば先日発生したばかりの貴州省での暴動も「注意喚起」となっています。
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/spot_top5.asp?id=009&num=1

それと先日の尖閣諸島での事件の際に台湾の交流協会が出したのも「注意喚起」です。

少し古くなりますが、2005年の反日暴動の際も「注意喚起」が発動されました。
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info.asp?num=2005C162

・・・ですので、これは単に傷害事件を報告しているのではなくて、これからも北京はこのような事件が起りうる危険な状態にあるのだ、ということを伝えようとしているものなのです。

前にも申し上げたとおり、日本大使館からのメールはいつも巧妙です。というのも中国当局もこのメールの内容を見ているのは間違いなしですから、下手にあげ足を取られるようなことは書けません。ですので、今回もちゃんと工夫してくれております。

男はその場で武装警察にとりおさえられました

武装警察というのは「警察」とついていますけど、はっきりいって軍の一部です。日本で言えば機動隊みたいなものだと思えばいいでしょう。ただ、機動隊と違って「戦闘」出来る人達です。小銃も装甲車も持っています。

【参考】http://ja.wikipedia.org/wiki/中国人民武装警察部隊

たまたま運良く現場に武装警察が居合わせたのでしょうか?そんなわけないですよね。事件が発生した「日壇路(国際倶楽部飯店正面付近)」というのは外国人、とりわけ日本人が多いことで知られる場所なのです。国際倶楽部には日本食レストランもありまして、私も以前よくあそこにお昼を食べに行きました。そういう場所に武装警察がいたのですから、これは予め警戒態勢にあったといえるでしょう。

大使館から送られてきたメールの文頭を見ると「7月3日午後0時45分頃(昼間)」とありますね。ちょうどお昼時です。「国際倶楽部飯店正面」というのはたぶん長安街に面している場所だと思うのですが(ちょうどそちらに日本食レストランもありますし)、これは東京でいえば銀座・日本橋あたりみたいな場所だと思っていただければ良いです。そういう場所で白昼堂々凶器を持って襲撃したわけですが、強盗ならばそんなことするでしょうか?ちょっと考えにくいですね。この中国人は何のために日本大使館員を襲撃したのでしょうか?

さて、日本大使館作文テクニックの真髄ともいうべきなのが以下の部分です。

現在、当局において動機等につき取調べを行っているところであるが、とりあえずの調査結果として、本件はあくまでも個別の事件であり、日本人一般に対する脅威が高まっていることを示すものではないとの趣旨の見解が伝えられています。

3.このような事件が発生したことを踏まえ、念のため、在留邦人の皆様におかれましては、引き続き、安全に十分ご注意ください。

中国の公安当局の言うとおりであったならば、「在留邦人の皆様におかれましては、引き続き、安全に十分ご注意」する必要も無く、「注意喚起」を発動する必要もないわけです。当局の言い分を出さないで「注意喚起」を発動すると、当局にお説教されますけれど、とりあえず当局の言い分も書いておいてから、「念のため」と断りを入れて「注意喚起」につないでいるのです。はっきり言って「当局はそういってるけど、そんなわけないじゃん」という内容なわけです。それとこのメールが大使館より送られてきた時間は7月4日の午前1時53分なのです。ものすごい深夜ですよね?別に朝出勤してから送ってもいいんじゃないの?と思ったりもしますが、これを送信した大使館員氏はよほど「在留邦人に早く伝えなければならない」と思う状況下にあったのでしょうね。「注意喚起」の発動を上長の許可なしでホイホイ送れるとは思えませんので、日本大使館内で裁可済みの内容です。そういう深夜にわざわざメールを送らなければならない理由は、たぶん次の日の昼(つまり今日の今です)にも北京在住の日本人が当該地域に食事に行ったりするわけですから、また巻き込まれる可能性があるため、早めにメールを出したのではないか、と予想されます。

前回の「秀水街事件」のメールも加えて考えて見ますと、これはどう考えても「日本人一般に対する脅威が高まっている」という趣旨の見解が示されているとしか思えません。

ここで思い出すのですが、先日北京の友人(中国人)から連絡があったことを紹介致しましたが(「外国人の取り締まりを強化?」)、よくよく思い出すと彼は最初から「警察の取り締まりがきつくなるから注意せよ」と言ったのではなかったのでした。彼はまず「お前はオリンピック期間中に北京に来るのか?」と私に質問し、私が行かないというと、「そうか。だったらいい。」と答えるので、怪しく思って「何かあるの?」と聞いたところ、口ごもったような言い方で「いや・・・危ないから」と言いにくそうにするので「何が危ないの?」と聞いたところ、「・・・いや、あのその、警察とかの取り締まりが厳しくなるからさ・・・」と答えたのでしたが、もしかしたら彼は警察のことではなくて、こういう北京での事情を伝えたかったのかもしれません。一般的に中国人は自分から進んで「反日中国人が何かやらかすみたいだから気をつけろ!」というような言い方はしませんから・・・。

ともかく、この時期に中国へ行かれる方は、念入りに注意されていた方がよいと思います。

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