■編著:樊建川
■出版社:外文出版社
■発行時期: 2007年
■頁数:279頁
■サイズ:173×240×15(mm)
■色:白黒
■写真点数:430枚



【写真・上】表紙です。


【写真・中】本書に掲載されている写真。このようなキャプションが付いてくる。この日本軍兵士の装備に注目したい。彼は対毒ガス戦装備を持っている。インコなどの小鳥が有害なガスなどに敏感に反応することは良く知られており、オウム真理教の教団施設への強制捜査などでも警察がインコを持参したのは記憶に新しい。この兵士が持っている小鳥が予め用意されたものなのか、キャプションに書かれてある通りに市民から奪い盗った物なのかはわからないものの、この兵士がたまたま愛鳥家で、個人的な欲望のために小鳥を奪い取ったのではないようであるし、個人的な趣味で従軍中に小鳥を持ち歩いているわけでもなさそうである。そしてここで注意しなくてはならないのは、彼らは対毒ガス戦装備を持っていても、仕掛ける側なのではなく、仕掛けられる側として防備のために毒ガス装備を所持しているのではないかと思われる。キャプションにある通り、装備から察するに彼らは「海軍陸戦隊のパトロール」である。そのため市内にて彼らが毒ガスを散布することは考えられない。そして仕掛ける側であるならば、「毒ガス探知機」としての小鳥は必要がないからだ。


【写真・下】本書に掲載されている写真。キャプションが揮っている。さて、このような日本語のキャプションは誰に読ませるためのものとして意図したものであろうか?この一例だけからでも本書が「歴史書」なのではなく、反日歴史観を刷り込むための洗脳教材であることが明確に理解できると思う。本書は一体誰に読ませるための作られたものであろうか?それが本書の最大の謎なのである。


2007年発売された本の中で・・・というよりも、江沢民によって始められた反日愛国主義教育の歴史上最大の奇書ともいうべきなのが本書です。

念のために改めて記しておくとこれは「中国で出版された日本語で書かれた」ものであるということです。この本は全く不思議な本であるとしか言いようがありません。下記に目次を紹介します。(当然ながらこちらで翻訳したものではありません。原文そのままです。)

<目次>
前書き
第一章 中国侵略の道をすすむ日本
・親子二代の「東北の王」
・「九一八事変」前
・張学良の宿命
・蒋介石の「九一八」
・悪魔の731部隊によるこの世の地獄
・東北地区での抵抗
第二章 内陸に拡大する戦火
・「一二八」淞滬抗戦
・「大刀で、日本鬼子の頭をはねる」
第三章 全面抗戦始まる
・全面抗戦の第一弾、盧溝橋
・戦火は再び上海に燃え広がる
・平型関の大勝利と忻口会戦
・南京防衛戦
・人類史上最大の虐殺――南京大虐殺
・戦闘精神の決戦、徐州会戦と台児荘戦役
・花園口堤防の決壊
・武漢会戦における抗戦精神
・14年間の全国大移動
・水を血に染めた海軍の防衛戦
第四章 最大の危機に直面する中華民族
・大地の悲愴な歌――南昌会戦
・「焦土抗戦」の長沙会戦
・激戦の崑崙関戦役
・抗日戦争の古参兵を探す
・「敵の後方に行く」
・民族のガン細胞――売国奴
・文化界の抗戦
・血みどろの戦場と化した四川省
・空襲大虐殺をこうむった不屈の重慶
・永遠の竜の後継者――華僑
・空中激戦した英雄たち
・道を得るものは助け多し
第五章 太平洋戦争の勃発と中国戦線
・アメリカ参戦
・中国の孤軍奮戦に終止符
・「東方のスターリングラード防衛戦」――常徳会戦
・鉄軍の遠征
・衛立煌司令官の勝利発言、「今日は東京での合流の始まりだ」
第六章 日本侵略者への最後の一撃
・日本のあがき
・日本の活路は降服あるのみ
第七章 日本の降服
後書き
付録 中国の主要な抗日戦争に関する博物館

このような構成となっており、満州事変前後から終戦までの「歴史」を多くの写真と共に紹介しています。本書の副題は「日本側の戦時報道写真で見る抗日戦争」とあります。当時日本側が発行した出版物から、その写真を持ってきているわけですね。筆者の方は元中国軍の軍人で、退役後に事業で成功を収めた方で、有名な骨董品の収集家であり、特に日中戦争関連文物の収集には力を入れており、その収集物を展示する8つの博物館を建てられたそうです。主な肩書きは四川省政治協商会議常務委員、中国抗日戦争史学会副会長、四川省収蔵家教会副主席、建川実業集団代表取締役社長、そして「建川博物館集落」館長。軍を退役をされて今は事業家と申しましても、実質上は政府機関の人です。

さて、何が不思議なのかと申しますと、

■不思議その1:出典は朝日・毎日系の刊行物ばっかり
本書に使用されている430枚の写真は著者が収集した当時の日本の出版物や日本軍将兵が個人的に写した写真集から得たものであるそうなのですが、各写真の出典は明らかにはされていません。ただ、本書の頭の方で見開き一杯に「日本国内で出版された戦時グラビア誌」として21冊のグラフ誌が出てくるのですが、11冊は朝日、5冊は毎日のものです。他の5冊は、今はすでに無い出版社や、出版社名が明らかになっていないものなのですけど、どれもこれも傷もほころびもない完全美品。著者が収集したものであるらしいのですが、それにしても日本国内で出版された60年以上も前の雑誌の美品がよくもこんなに入手できたものだなぁ・・・と感心します。著者は収集のために何度も日本を訪れているそうですから(熱心な方ですね)、それを考えると不思議でもないのですが、それにしてもとどうして朝日・毎日系の出版物がこんなに多いのか?と思います。別に両社から資料提供を受けているわけではないのですから、もっと他の出版元の刊行物が含まれていても良いではないですか。

■不思議その2:日本語版である
「後書き」に「本書は中国語と日本語の二カ国語で同時出版されるものである」、「本書は編集者の直感によって中国語版の出版と同時に中国外文出版社の日本語出版物として出版されることになった」と書かれていますが、現在のところ本書の中国語版を私は発見しておりません。かなりしつこく探しましたが、全くありません。本書は中国で出版されたものです。中国ではたまに全て日本語で書かれている中国で出版された書籍を見かけることがありますが、大体は日本語教育用のもので、こうした「歴史書」が日本語で発行されるのは始めてのことではないかと思います。しかも中国国内で販売されているのです。一体誰が買って読むのでしょうか?もしかしてこの本は日本で販売されたものなのかと思い、日本でもいろんなルートで探してみましたが、どうもその痕跡もありません。

■不思議その3:日本語だけれど歴史に関する用語は中国語のものと同じ
たとえば「旧満州」は「東北地区」と書かれます。組織名などで「南満州鉄道株式会社」など「満州」が出てくることがあったとしても「満州」という言葉が「旧」をつけた形でも出てくる事はありません。筆者にとってあの地域は最初から「東北地方」なのであって、「旧満州」すらもありえないのです。そして前掲の目次からもわかるように「九一八」、「一二八」という呼び方も満州事変、第一次上海事変の中国側呼称です。「九一八事変とは満州事変のことですよ」というような断り書きすらないのです。これらの用語についてある程度知っている者ならば問題は無いのですが、こういうところから見えてくるのは一体どういう意図に基づいて、誰に読ませるためのものなのか?ということがよくわからないということです。

■不思議その4:値段が書かれていない。
中国で一般の書店で販売されている書籍で、値段が書かれていない本というのは、なかなか見かけることがありません。といおうか私は本書以前に見たことがありません。(学校で使用される教科書などでは値段が書かれていないこともありますが)人民元の値段も、日本円の値段も、どちらも書かれていないのです。ただ奥付の出版社名や所在地、ISBNナンバーなどは日中二カ国語で併記されております。

この分野に詳しい方々に実物を見ていただき、本書の出版のいきさつや、実際にはどのように使われたものなのか、ご意見を伺うなどして、本書が何であるかをいろいろと探ってみたものの、未だに納得の行く事実にはたどりついておりません。今までの推察をまとめて見ますと次のようになります。

★仮説1:販売されるために出版されたものではない・・・という説
中国で市販される書籍で値段が書かれていないものは珍しいのですが(それは中国以外の国でもそうだと思うのですけど)、配布されるための書籍であるならば値段が書かれていなくても構わないわけです。教科書なんかと同じですね。でもその場合、この日本語の書籍は何処で配布されるものなのか?という疑問が出てきます。

★仮説2:日本から中国へやってくる修学旅行の学生たちへ販売・配布されている?・・・という説
日本国内にある中学校・高校などが中国へ修学旅行にやってくることがあります。その際に「愛国主義教育基地」の博物館やら記念館を見学することがあるそうですが、そういう場所の売店などで、反日関連の書籍が売られているのを見かけることがあります。そこで販売されているのではないか?という説です。たしかにそういう場所にはこういう書籍が売られていますけれど、未だに日本語の書籍を見かけたことがありませんし、本書が販売されているところもみたことがありません。

★仮説3:中国の日本語学校で使われている?・・・という説
中国では日本語を教える学校が幾つかありまして、大学以外にも日本の中学校に相当する学校で、専門の語学を教えるための学校というのがあるのです。その学校で日本語によって中国の反日歴史観を学習するために作られた教材なのだ、という説です。これならば用語がすべて中国側の呼称に統一されているのも納得ができますし、「東北地区は旧満州のことですよ」とか「九一八事変とは満州事変のことですよ」と説明する必要がありません。しかし日本語学校であったとしても、どうして中国人に日本語で歴史を教えなければならないのか?という疑問は残ります。

★仮説4:日本の中華学校で使われている?・・・という説
中華学校とは横浜と神戸にある中国人のための学校です。それらの学校で本書は歴史教育教材として使われているのではないか?という説です。これはかなりあり得そうな気がします。この本が持つ「不思議」の全ては、それでほとんど大変納得がいくと思うのです。でもウィキペディアなどで見る限りは神戸の中華学校は文革の時に毛沢東語録を生徒に配布しなかったそうで、そういう点から見ると果たしてどうなのか?という気がしてきます。でも神戸の中華学校卒業生から中国政府に入った方もいるそうですから、なんともそれはわかりません。

★仮説5:日本国内の普通の学校で教師用の副教材として使われている?・・・という説
本書の内容は中学生や高校生に読ませるにはちょっと難しい内容になっています。文体や仮名遣いなどは簡単に書かれていますが、中国の地理や中国近現代史について基礎知識が無ければ、読み進めるのは難しいのではないか?と思われます。そこで本書は日本国内の日本人向けの学校の中で日本人の教師が日本人の学生に反日教育をする際の副読本として使われているのではないか?という仮説が出てきました。そうなると巻末にある「付録 中国の主要な抗日戦争に関する博物館」というのが、ああなるほど・・・と思われるのです。なぜならば中国にいる日本語使用者に対してそんなことを教える必要はないからです。本書でそれを知らせる必要の無い情報です。日本に居る日本語使用者に反日教育をしたり、反日洗脳修学旅行を計画する時にこれらの博物館リストは大変参考になるでしょう。

本書「後書き」にてこのように書かれています。「本書は編集者の直感によって、中国語版の出版と同時に中国外文出版社の日本語出版物として出版されることになった。おそらく担当編集者は、時間の制約と仕事のきつさに大変苦労したことと思う。日本語版を世に問うことにより、戦後生まれの若い世代の日本人に、教科書でまだはっきり説明されていない歴史の真実を学ぶ上で参考にいただければ大変うれしい」

本書の日本語訳は他の中国で刊行されている日本語の書籍とは全く比べ物にならないほどの正確で精度の高い翻訳内容であり、巻末には日本人によって校正されたことが記されています。中国語の原版が発見されていないこともあり、本書「日本語版」が「直感によって」企画されたものではなく、用意周到に制作されたものであることは、ほぼ明らかであると言えるでしょう。筆者の希望通り本書は「戦後生まれの若い世代の日本人に、教科書でまだはっきり説明されていない歴史の真実を学ぶ」ために日本国内の何処かの学校で使われているのでしょうか・・・本書は大変謎めいた反日出版物であるといえます。

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