2009.11.30
【中国復刻版】1940年代解放前の北京地図

北京に城壁がまだあった頃の、共産党によって破壊される前の、社会主義改造によって破壊される前の、文革によって破壊される前の、改革開放政策と経済発展によって破壊される前の、本当の北京がここにあります。左下に見えるのは地図袋。上に見えるのは「西山名勝図」、 「頤和園図」、「平津保一帯全図」、「北海公園図」、「故宮博物院図」です。右に見える写真は「天壇祈年殿」、「天壇圓丘」、「正陽門東車站」、「正陽門外五牌樓」、「崇文門内大街」、「北海白塔」です。その下に見える図は「電車路線站名図」(かつて北京に走っていた路面電車の路線図)、と「公安区分図」(警察の管轄区分図)となります。十大附録てんこ盛り!オマケたっぷりの古地図です。
(上)先ず特筆すべきは色分けの良さでしょう。宗教施設・伝統建築は黄色、学校は緑、政府機関は赤・・・というように色分けされているので 大変見やすくなっています。この写真は故宮東側~王府井周辺ですが、北京飯店は既に今と同じ場所に開業しております。その隣りに鉄路局が見えます。北側に目を転じて、東安市場が見えますね。その東側には陸軍将校所というのが見えます。ここは現在王府井大飯店になっている場所のはずで、あそこは解放軍経営だったはずですから、なるほど元々あそこは中華民国陸軍の土地であったことがわかりますね。協和医学大学の右に日本倶楽部が見えます。一体どんな場所だっ たのでしょうか?そのそばに協和医院が見えますが、これは1917年にアメリカのロックフェラー財団が設立した病院だそうで、今でもありますね。この地図は清王朝の王城である北京が、中華民国の北京となって近代化を始めてから30年くらい後に作られたもので、単純に言えば明治三十年頃の東京を見るようなものだと思えばよいでしょう(年代はずれますが、本格的な近代化が始まってから、という意味で)。現在の北京の原型と清朝時代の北京の両方が混在するような 状態でして、この時代の北京の地図を解読するのは、北京という都市の履歴書を読むような作業で、大変興味深いものがあります。
(下)北京にはかつて立派な城壁がありました。解放後に取り壊されてしまいましたが、今もちょうど城壁の跡がそのまま地下鉄の路線になっていまして、和平門があった場所には現在地下鉄の和平門站がありますので、ご存知の方も多いでしょう。以前はこの城壁に沿って鉄道が敷かれていたことがわかりますね。和平門の城内側をよく見てください。「午炮台」とありますね。これはすなわち「ヌーンデイガン」のことではないでしょうか?あの香港にあるお昼の時報代りの大砲です。 あれは香港ではジャーディンマセソン商会のものですが、北京のジャーディンマセソン商会はここから東にずっと進んで大使館街にありますから、直接関係があ るようには見えません。さていったいこの正体は何なのでしょうか・・・こういう小さな謎を一つ一つ見つけては調べたりすると、たった一枚の地図ですが、そ れを通して歴史の深奥へと迷い込んでしまいそうになります。これぞ古地図快楽の真骨頂というものでありましょう。
(左上)こちらは今の天安門広場の東側にあたる場所で、各国の大使館、軍営、金融機関、商社などがこの一角に集中しています。升目状にきっちり区画整理する北京ではめずらしく波打つような形の道が東西に伸びていますが、これがあの有名な「東交民巷」です。北京で一番長い胡同であり、義和団事件、文化大革命でもここは世界の注目をあびる場所となります。
(左下)拡大してよく見てみましょう。英国大使館の向かいに日本軍営 が見えます。その南側には正金銀行、日本大使館があります。東交民巷を挟んで向かいには香港上海銀行とジャーディンマセソン商会が見えますね。この二つは香港でもご近所さんです。こういうのを見ていますと、当時の世界の仕組みをこの東交民巷の一角に見るような気がしてきます。
(右上)「電車路線站名図」です。よーく見てみますと、なかなか巧妙な路線図であるといえます。今の北京の城市交通の原型がここにあるように思いますが如何でしょうか?
(右下)「公安区分図」です。こういう資料はなかなか使うこともないと思いますが、やはり興味深く思いますね。口に×の記号が見えますが、これは地図の同じ場所にも同じ記号がありますから、たぶん警察署のことでしょうか。この同じ位置には今何があるでしょうか?次に北京へ行く事があればぜひ検証してみたく思います。
■原題:【京都古地図庫】北平市全図
■原版:蘇甲榮編製 日新輿地學出版社「北平市全図」
■出版社:北京地図出版社
■発行時期: 2006年1月
■収納時サイズ:209×270(mm)
■展開時サイズ:670×980(mm)
中国都市復刻版古地図ブームに乗り遅れた感のある北京地図出版社が、「餅は餅屋、地図は地図屋に任せろ!」と言わんばかりに地図屋の威信をかけて世に送り出 した渾身の一作とも言うべき北京古地図の決定版がこの「北平市全図」でありましょう。原版が蘇甲榮編製 日新輿地學出版社発行とあれば、我々の期待を裏 切ってくれるわけがありません。他の出版社の古地図に比べて紙質も印刷も優れておりまして、これでもかといわんばかりに、民国三十年代の北平市(南京に遷 都しているため「京」の字が使えず、この時期の北京は「北平」と呼びます)の全貌を余すことなく堪能させてくれるのが本作です。共産中国の都となって片っ 端に破壊される以前の北京の姿を知りたいのであれば、この地図は欠かせません。その他、北京の近現代史を地理的に検証するのならば、この地図は必携のマス トアイテムといえるのではないでしょうか。













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