【写真集】民国南京1927-1949(北伐から解放までを277枚の写真で観る)
■原題:民国南京1927-1949
■著者:秦風
■出版社:文匯出版社
■発行時期: 2005年1月
■頁数:279頁(125千字)
■サイズ:171×228×22(mm)
■重量:481g
■色:全白黒
■写真点数:277枚
「南京大虐殺」とか、「中華民国」にしぼった本は数あるものの、この写真集は少し変わっておりまして、1927年の蒋介石の北伐軍入城から1949年の「解放」までの22年間の南京を写真でつづるものです。1927年から1949年の南京?ちょっと変な区切りだと思いませんか?まずはそこから説明させていただこうと思います。
▲「国民政府建都南京記念撮影 中華民国十六年四月廿日」と書かれています。民国歴16年といえば1927年にあたります。我々日本人は辛亥革命が1911年ですから、中華民国はそこから始まったように思いますが、清朝打倒以後長く袁世凱や軍閥とのゴタゴタが続いたため、実際に「中華民国」というものが形をなして動き出すのは、蒋介石が北伐を開始して南京を占領した後のこと・・・といえるのかもしれません。そういう歴史的背景から、このような写真集が刊行されたわけです。
▲1935年9月、砲兵・騎兵・歩兵の連合軍事演習で模型による説明を受ける汪兆銘。彼はこの2ヵ月後にテロに遭い、拳銃弾3発を受けます。急所を外していたので一命を取り留めましたが、後年彼が名古屋で息を引き取ることになったのは、この時に受けた負傷が原因なのだそうです。それにしても汪兆銘と軍事演習ってあんまり似合わないと思いませんか?

▲キャプションによると1938年に日本の内閣情報局と日本軍宣伝機関の刊行物に掲載されていたという写真です。この時は「大虐殺」があったので、これらの写真は日本によるプロパガンダであると説明していますが、さてどうなのでしょうか?左の写真では若い女の子が2人と子供を抱いた女性が1人見えます。たぶんショッピングでもしているのでしょうか。
右の写真の「新開協和綢緞局」とありますが「綢緞」とは絹織物のことです。たぶん絹織物を扱う店のことだと思います。その横に「協和 大 減價 放盤」とありますが、「減價」は値下げするということ、「放盤」も値引きする意味があるそうですが、高価買取りの意味もあるそうです。道行く人も落ち着いた感じで、若い女性の姿も見えますし、後ろの方に人力車か馬車のようなものも見えます。人々の服装と後ろに見える街路樹に葉が一つもないところから考えて、寒すぎないまでもまだ春遠い頃・・・たぶん3月~4月くらいの撮影ではないでしょうか・・・一般的に「大虐殺」は1937年12月の南京陥落後2ヶ月に渡って続けられたそうなのですが、このような街の様子を見ますと、果たしてこれが本当に「大虐殺」が行われて1~2ヶ月後の同じ場所なのだろうか?という疑問を感じずにはいられません。でも、本書では「日本のプロパガンダなのである」と断言するわけです。

▲左側の写真も「日本のプロパガンダ」と説明されています。上は1939年、下は1940年に撮影されたもので、日本軍国主義者はこのように商品が豊富なところをみせて、日本占領下で中国人の生活が豊かになったように日本国内の一般国民を騙して戦争に参加させていたのだ・・・みたいなことが書かれておりまして、読んでいるだけで疲れと眩暈を感じさせられます。右側は1942年9月に汪兆銘と外務大臣が日本からの使節を迎えた際のもの。この時汪兆銘政権は国際的な承認を受けておらず、外交活動といっても日本の指示によって行われていたのであって、中国国民の意思を全く代表しないものなのである・・・とキャプションにあります。

▲左の写真は日本兵の集団写真ですが「征服者の気焔」というタイトル。でもみんな楽しそうに笑って、何人かは伸びたヒゲをひっぱってふざけております。タイトルが訴えようとしている雰囲気は一切感じられません。右の写真は無辜の一般市民を柱に縛り付けて虐待している・・・と説明していますが、さて、どうなのでしょうか?何をしているのかわからないのですが、緊迫感がないのだけはわかります。
▲松本潔氏の公開処刑。詳細はわからないのですが、彼は憲兵であったらしく、多くの人民を虐殺したとして1947年6月11日に戦犯裁判にかけられて死刑判決を受け、即日執行された・・・とのこと。雨花台で処刑されたのが午前11時。裁判は何時にしたのでしょうか?まさか夜中の1時とか、朝の5時とかではないでしょう。やはり9時以後ではないでしょうか。この原っぱで裁判をしたわけでもないでしょう。この雨花台という場所は南京城内から若干離れております。もし城内の裁判所で判決を受けて即日処刑が午前11時だったら、朝9時ぐらいに開廷したとしても2時間以内に裁判が終わってこの場所への移動も出来たことになりますから、一体どういう裁判だったのだろうか?という疑問を感ぜずには居られません。
中華民国というのは短い歴史の中で激動を繰り返したわけですが、この写真集では「南京」という視点からそれらを見る事ができます。政治・戦争関連だけではなく、当時の南京市民の生活の様子や、各種産業などの写真も含まれており、民国時代の中国人の姿を伝える上でもわかりやすい写真集となっております。
中国で出版されている歴史の本といのは「どうせプロパガンダ・捏造なんでしょ?」と思われがちですが、その内容の真偽はさておき、我々の読み方一つで多く のことを知りえる手がかりとなります。あちらのこの手の写真集の中には、さぁこれでもか!まだ足りないか!といわんばかりの残虐非道が満漢全席のスプラッ ター系お化け屋敷みたいなのも多いのですが、本書は民国時期の南京だけにスポットをあてたため、バランスのよくとれた内容になっていると思います。
それと、中国の写真集というものは、大体ざっくりした構成になっているのですが、本書では時系列でテーマを区切って15章となっており、写真点数277枚で、キャプションなども結構しっかりしたものになっています。このあたりはさすが文匯出版社&秦風さんの監修というだけはある・・・と思います。
<目次>(以下拙訳、原文は中国語)
一、少壮軍人の崛起
二、建軍と建国
三、首都生活
四、抗日戦争の前夜
五、太陽旗の下で
六、凱旋還都
七、日本捕虜と日本居民
八、正義の裁決
九、衰退への過渡期
十、生産・金融・交通
十一、文教・建築・風光
十二、夫子廟
十三、正副総統選挙
十四、人物写真
十五、最後の日





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